II型糖尿病とは?
II型糖尿病は、インスリンの分泌量が減少したり、効きが悪くなったりすることで血糖値が慢性的に上昇する病気です。代表的な生活習慣病の1つで、日本人の糖尿病のほとんどがこのⅡ型糖尿病で占められています。
ゆっくりと発症・進行するうえ自覚症状に乏しいため、健康診断での早期発見が重要です。インスリン療法が必須となるⅠ型糖尿病とは違い、早期治療が叶えば生活習慣の見直しだけで改善できることもあります。
II型糖尿病の原因
主な原因となるのは、不適切な食生活や運動不足による生活習慣の乱れです。過食や運動不足により体内に余分な糖分が蓄積され、インスリンの働きが低下することで徐々に発症・進行します。また、内臓脂肪の蓄積もインスリンの作用に影響するため、脂質異常症やメタボ・肥満症なども糖尿病の発症リスクを高めてしまいます。
遺伝的な要因も関係しますので、糖尿病の家族歴がある場合は注意が必要です。
II型糖尿病になりやすい人
- 糖尿病の家族歴がある方
- メタボ・肥満傾向にある方
- 慢性的に運動不足の方
- 過度の飲酒習慣がある方
- 不規則な食生活を送っている方
- 喫煙習慣のある方
- ストレスの多い生活を送っている方
- 高血圧や脂質異常症がある方
- 過去に妊娠糖尿病を経験された方 など
糖尿病の合併症
糖尿病自体は命に関わる症状を引き起こすものではありません。しかし、糖尿病による高血糖状態は血管に大きな負担をかけるため、血管の老化である動脈硬化を促進してしまいます。そのまま放置されると以下のような様々な合併症を引き起こす可能性があります。
細小血症
高血糖状態が続くことで、全身の細い血管が障害されて様々な部位に影響が起こります。中でも糖尿病の合併症として多いのが末梢神経・腎臓・目の病気で、これらは糖尿病の「三大合併症」と言われています。
糖尿病の三大合併症
- 糖尿病性神経障害…全身の神経が障害され、手足のしびれや痛み、消化器の不調などが生じます
- 糖尿病網膜症…網膜が障害され、視力低下や失明のリスクが高まります
- 糖尿病腎症…腎臓のろ過機能が低下し、体内の老廃物を適切に排泄できなくなります
大血管症(大血管障害)
動脈硬化が進むと、脳や心臓に血液を運ぶ太い血管が狭くなったり、詰まりやすくなったりします。血液がスムーズに流れなくなることで、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気を引き起こすリスクが高まります。
II型糖尿病の検査
糖尿病の検査では、血液検査で分かる「血糖値」と「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」の値を測定し、それぞれの結果から判定します。これらが基準値から高い場合に糖尿病が疑われ、一定の条件を満たした場合に糖尿病と診断されます。
血糖値
血糖値は、血液中のブドウ糖濃度を示す値です。ブドウ糖は体や脳を動かすエネルギーとなりますが、過剰になるとかえって体には悪影響となります。
※正常な人の血糖値…食前と食後を含めて70~140mg/dL
HbA1c

当院には約5分でHbA1cを測定できる検査装置(アイギアプロ(S))があるため、その日のうちに治療方針や薬剤調整が可能です。
HbA1cは、過去1~2か月の平均的な血糖値を反映する指標です。血糖値と異なり直前の食事や運動などの影響は受けません。
※正常な人の基準値…4.6~6.2%
基準値と診断
血糖値は常に変動するため、1回の検査のみでは確定診断ができません。以下のような基準を設け、糖尿病が疑われる場合には再度検査を実施します。複数回の検査結果や、同時に測定するHbA1cの値とあわせて判定し、一定の基準を満たした際に糖尿病と診断します。
空腹時血糖値100~109mg/dL
正常の範囲内ではあるものの、やや高めの状態です(正常高値)。生活習慣の改善など予防的な対応が推奨されます。
空腹時血糖値110~125mg/dL
正常な範囲内ですが隠れた糖尿病の可能性もあるため、境界型糖尿病(糖尿病予備群)の状態です。場合によっては精密検査(75g経口ブドウ糖負荷試験)も検討します。
なお、HbA1cの値によっては空腹時血糖値が正常値でも糖尿病と診断できることもあります。
空腹時血糖値126mg/dL以上、
または食後血糖値200mg/dL以上
糖尿病が強く疑われる状態です。一度のみでは糖尿病と断定できないため、後日再検査を実施します。2回目以降の検査でも同様の結果が出た場合に糖尿病と診断されます。
なお、同時に行ったHbA1cの値が6.5%以上だった場合は、その場で糖尿病と診断します。
自覚症状や網膜症がある場合
血糖値が基準値より高値であり、なおかつ口渇、多尿、疲労感などの糖尿病に典型的な症状や、糖尿病網膜症による症状が確認された場合は、HbA1cの値に関わらず糖尿病と診断します。
糖尿病の臨床診断の簡易フロー
血糖値・HbA1cともに基準値より高い
初回検査でも糖尿病と診断される可能性あり。
血糖値・HbA1cのいずれかが基準値より高い
糖尿病の疑いあり。後日再検査を行い、同様の結果が出た場合に糖尿病と診断。
※糖尿病の症状や合併症が見られる場合には、初回検査でも糖尿病と診断される場合あり
II型糖尿病の治療
Ⅱ型糖尿病の治療では、食事療法と運動療法による生活習慣の改善に、必要に応じて薬物療法を組み合わせて行います。
食事療法
バランスのよい食事を規則正しく摂ることが基本です。炭水化物の過剰摂取を控える、食物繊維を十分に摂るなど、無理のない範囲で継続できる食習慣を心がけます。
運動療法
ウォーキングなどの有酸素運動を中心に、適度な運動を日常生活に取り入れます。運動は血糖値の改善だけでなく、肥満解消や心肺機能の向上にも効果があります。
薬物療法
食事・運動療法で十分な効果が得られない場合は、内服薬やインスリン注射による治療を行います。治療の継続によってインスリンの分泌や効きが改善されれば、治療薬の変更・中止も可能です。
II型糖尿病の注意点
食事制限について
「糖尿病=食事に制限がかかる」というイメージを持たれている方も多いですが、治療における注意事項を守っていただければ、基本的に食べてはいけないものはありません。あくまでも「食べ方」に注意が必要なだけです。
Ⅱ型糖尿病とインスリン療法
病気が進行している場合には、Ⅱ型糖尿病でもインスリン療法が必要になります。ただし、今後ずっと必要なわけではなく、インスリンの分泌状態が改善されれば他の治療薬へ変更できる場合もあります。
糖尿病専門医のいる箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックでは、定期的な検査でインスリンの分泌能力を確認しながら、患者様の状態に合わせた治療方針を検討します。現在の糖尿病治療に不安がある場合も、お気軽にご相談ください。