I型糖尿病とは?
I型糖尿病は、体の免疫システムが膵臓のインスリン産生細胞(β細胞)を攻撃してしまう自己免疫疾患です。インスリンはブドウ糖を体内に取り込むために必要不可欠なホルモンですが、I型糖尿病ではこのインスリンがほとんど作られなくなるため、正常な糖代謝ができずに血糖値が慢性的に高くなってしまうのです。
他の糖尿病では生活習慣の見直しのみでも改善が期待できますが、Ⅰ型糖尿病では多くの場合で外部からインスリンを補わなければなりません。また、他の自己免疫疾患(甲状腺疾患など)を合併することもあるため、日常的な健康管理が必要となります。
I型糖尿病の原因
Ⅰ型糖尿病は、体の免疫システムが誤って膵臓のβ細胞を攻撃し破壊することで発症します。この免疫異常の背景には未だ不明な点が多いのですが、遺伝的要因やウイルス感染などが関係していると考えられています。
発症に生活習慣は無関係
生活習慣が影響するⅡ型糖尿病とは違い、Ⅰ型糖尿病の発症に生活習慣は無関係です。そのため、Ⅱ型糖尿病は中高年の方に多いのに対し、Ⅰ型糖尿病では小児期から思春期の方に好発する傾向があります。
疾患の進行速度による分類
Ⅰ型糖尿病は、発症後の進行速度によって以下の3つに分類されます。
劇症Ⅰ型糖尿病
発症から約1週間という極めて短期間でインスリン分泌が枯渇するタイプです。治療が遅れると糖尿病ケトアシドーシスを発症して命に危険が及ぶこともあるため、早急な治療が必要となります。
急性発症Ⅰ型糖尿病
発症から2~3か月程度の期間でインスリン不足が進行するタイプで、Ⅰ型糖尿病の中では比較的よく見られます。発症後一時的にインスリンの効果が改善することがありますが(ハネムーン期)、治ったわけではなく、しばらくの後に再びインスリン療法が必要になります。
緩徐進行Ⅰ型糖尿病(SPIDDM)
数年かけて徐々にインスリン分泌が低下していくタイプです。その経過にから初期はⅡ型糖尿病と間違われることもあるため、的確な鑑別と治療が重要となります。
I型糖尿病とⅡ型糖尿病の違い
発症の仕組み
I型糖尿病は、免疫システムの異常によりインスリンを作る細胞が破壊される病気です。一方のⅡ型糖尿病は、生活習慣の乱れや肥満などが原因となり、インスリンの分泌低下や働きの悪化が起こる病気です。
治療法の違い
I型糖尿病では体内でのインスリン分泌がほとんどなされないので、不足したインスリンを外部から補充する必要があります。Ⅱ型糖尿病では必ずしもインスリン療法は必要なく、食事・運動療法による生活改善を基本とした血糖コントロールを行います。
I型糖尿病とII型糖尿病の比較
Ⅰ型糖尿病 | Ⅱ型糖尿病 | |
---|---|---|
主な原因 | 自己免疫異常 | 生活習慣、遺伝 |
好発年齢 | 小児~思春期 | 中高年 |
インスリンの分泌 | ほとんどなし | 正常な場合もある |
症状の進行 | 突然あるいは徐々に(種類による) | ゆっくり進行 |
I型糖尿病
妊娠糖尿病は妊娠中のホルモンバランスの変化により、一時的に血糖値が上昇する状態です。妊娠中にⅠ型糖尿病を発症することもあり、その場合は「妊娠中の明らかな糖尿病」として区別されます。
Ⅰ型糖尿病患者様の妊娠と出産
すでにⅠ型糖尿病の方でも妊娠・出産は十分に可能です。ただし、母体と胎児の健康のために、妊娠前から出産後まで慎重な管理が求められます。妊娠するためのクリアする条件もありますので、妊娠の希望は事前に必ず医師に相談するようにしましょう。
妊娠の許容条件
- 血糖コントロールが正常にできている
- 糖尿病網膜症や糖尿病腎症などの合併症がない、あるいは落ち着いている
I型糖尿病の検査
Ⅰ型糖尿病の検査では、血液検査や尿検査などで以下の項目を調べて診断します。
自己抗体検査
抗GAD抗体(※)などの自己抗体を血液検査で測定します。これらの検出は自己免疫が起きている証拠となるため、他の糖尿病との鑑別のために重要です。
(※)抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体。β細胞に対する自己抗体の1つで、Ⅰ型糖尿病の発症前から血液中に見られ、発症後に特に高値となる
血糖値・HbA1c
定期的な血液検査で血糖値やHbA1c(過去1~2か月の平均血糖値を反映)を測定します。これにより、血糖コントロールの状態を評価します。
インスリン分泌能の評価
血液検査でインスリンの分泌量を確認します。また、必要に応じて血液や尿中のケトン体も測定し、インスリン不足の程度を判断します。
I型糖尿病の治療
インスリン療法(インスリン注射)
不足しているインスリンを外部から直接補う治療法で、Ⅰ型糖尿病ではほぼ必須となります。患者様自身で血糖値を測定しながらインスリン注射を行っていただきます。注射の頻度や部位、タイミングは、患者様の状態や製剤によって異なりますので、必ず指示通りに行ってください。
食事療法・運動療法
Ⅰ型糖尿病でも、食事療法・運動療法による血糖コントロールは重要です。極端な食事制限は必要ありませんが、栄養バランスのよい食事を規則正しく摂ることが重要です。
また、適度な運動はインスリンの働きを高める効果がありますので、血糖値の安定化に役立ちます。運動の種類や強度は患者様の状態にあわせて調整しますが、いずれの場合でも運動前の血糖値チェックと低血糖への対策は不可欠です。
I型糖尿病の注意点
シックデイ対策
風邪や胃腸炎などで食事が取れない状態(シックデイ)でも、インスリン(時効型インスリン)は必ず注射する必要があります。水分と糖分の補給をしつつ、こまめな血糖値チェックを行うようにしましょう。
低血糖への対応
インスリン治療中は常に低血糖への注意が必要です。ブドウ糖を常備し、低血糖の症状(冷や汗、手の震え、動悸など)が出たら速やかに対応してください。重症化すると意識障害を起こす可能性もあるため、周囲の方へ事前に説明し、病気への理解を得ておくことも大切です。
血糖コントロール
Ⅰ型糖尿病では血糖値が安定しにくい場合があります。常に目標値をキープする必要はありませんので、極端な高血糖を避けつつ、低血糖の予防を重視した管理を行います。必要に応じてカーボカウント法(※)や持続血糖測定器の使用もご検討ください。
(※)食事中の炭水化物の量を把握し、血糖値の調整をする方法
食事について
極端な食事制限は必要ありません。体格や活動量に応じた適切なカロリーをバランスよく摂取することが基本です。
箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックでは、糖尿病専門医によるアドバイスにより、安定した血糖コントロールをサポートいたします。糖尿病治療中の食事について、気になることがあれば何でもご相談ください。