甲状腺がん

甲状腺がん

甲状腺がんとは?

甲状腺がん

甲状腺は、のどぼとけの下にある蝶のような形をした小さな臓器で、全身の新陳代謝を調節する甲状腺ホルモンを作っています。このホルモンは体温調節、心拍数、エネルギー代謝などの重要な働きを担っており、私たちの生命活動に欠かせません。
甲状腺がんは、この甲状腺にできる悪性腫瘍です。他のがんと比べて進行が遅く、予後が良好なものが多いため、がんの中でも比較的おとなしいタイプと言えるでしょう。しかし、甲状腺の周囲には気道や食道などの重要な臓器があるので、転移を起こす前の早期発見・早期治療が大切です。
「首にしこりがある」「のどに違和感がある」「声がかすれる」などの症状がある方は、箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックへお気軽にご相談ください。

甲状腺がんの種類

甲状腺がんは、甲状腺で発生する原発性甲状腺がんと、他の臓器から転移した転移性甲状腺がんに分けられます。原発性甲状腺がんには以下の種類があります。

乳頭がん

甲状腺がんの大部分(約90%)を占めるタイプです。リンパ節転移は多いものの進行が遅く、予後は良好で生命に関わることはまれです。

濾胞がん(ろほうがん)

乳頭がんに次いで多い(約5%)タイプで、良性腫瘍との区別が困難な場合があります。乳頭がんに比べてリンパ節転移は起こりにくいですが、肺や骨への遠隔転移を起こしやすいです。

髄様がん(ずいようがん)

乳頭がんや濾胞がんに比べて進行が速く、リンパ節や肺、肝臓への転移を起こしやすいがんです。一部は遺伝性で、生まれつきの遺伝子変異が原因となります。

未分化がん

進行が非常に速く、悪性度の高いがんです。周囲の臓器への浸潤や遠隔転移を起こしやすく、早期の治療が重要です。

悪性リンパ腫

血液のがんの一種で、甲状腺に発生することがあります。橋本病(慢性甲状腺炎)のある方に発生しやすい傾向があります。

甲状腺がんの症状

初期症状

甲状腺がんの初期にはほとんど症状がありません。首を触った時に硬いしこりを見つけたり、健康診断で指摘されたりして発見されることがほとんどです。

進行時の症状

がんが大きくなると、周りの組織を圧迫したり浸潤したりして症状が現れます。声帯を動かす神経(反回神経)が侵されると声がかすれます。気管が圧迫されると息苦しさを感じ、食道が圧迫されると飲み込みにくさを感じることもあります。

リンパ節転移による症状

首のリンパ節に転移すると、リンパ節が腫れて硬いしこりとして触れるようになります。痛みはないことが多く、複数のリンパ節が数珠状に腫れることもあります。

その他の症状

まれに甲状腺がんから甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、甲状腺機能亢進症様の症状(動悸、体重減少など)が現れることもあります。

甲状腺がんの原因

甲状腺がんのはっきりとした原因は分かっていませんが、以下が関係するとされています。

放射線被ばく

特に小児期の放射線被ばくが甲状腺がんのリスクを高めます(特に乳頭がん)。被ばくから発症まで10~30年かかることが多いです。

遺伝的要因

家族に甲状腺がんの方がいると、発症リスクが高くなります。特に髄様がんでは、20~40%が遺伝性です。

既存の甲状腺疾患

良性の甲状腺腫瘍や甲状腺腫からがんが発生することがあります。また、橋本病などの慢性甲状腺炎も、わずかながらリスクとなります。

甲状腺がんの検査と診断

血液検査

甲状腺機能や腫瘍マーカー(サイログロブリン、CEA、カルシトニンなど)を調べます。血液検査のみで良性・悪性の判断はできませんが、サイログロブリン(※)の異常な高値が続く場合は、甲状腺がんが疑われます。

(※)甲状腺から産生されるタンパク質の一種

甲状腺エコー検査

超音波で甲状腺に生じたしこりの大きさや形、内部の性状を詳しく調べます。がんが疑われる所見として、境界不明瞭、内部に微細な石灰化、豊富な血流などがあります。当院では超音波専門技師が精密な検査を行い、小さな病変も見逃しません。

病理検査

エコーで見ながら、細い針をしこりに刺して細胞を採取し、顕微鏡で調べます(穿刺吸引細胞診)。他の検査で悪性が疑われる際に実施します。

CT・MRI検査

がんの広がりや転移の有無を調べます。手術前の評価に重要です。

※病理検査、CT・MRI検査は提携医療機関と連携して実施します

甲状腺がんの治療

手術

甲状腺がんの基本的な治療は手術です。がんの大きさや広がりにより、甲状腺の一部切除、または全摘術を行います。リンパ節転移がある場合は、リンパ節郭清も行います。

なお、がんが小さく急速な進行のリスクがないと判断した場合には、経過観察に留めることもあります(積極的経過観察)。

術後治療

甲状腺全摘術後は、甲状腺ホルモンの補充が必要です。また、一部の患者様では、放射線治療(アイソトープ治療)を行い、残存甲状腺組織や転移巣の治療を行うこともあります。

薬物療法

抗がん剤や分子標的薬などを使用し、がん細胞の増殖を抑えます。手術不能な進行がんや、アイソトープ治療が効かない場合に検討されます。

※手術やアイソトープ治療は、提携医療機関と連携して実施します

日常生活での注意点

定期的な経過観察

甲状腺がんは再発することがあるため、手術後も定期的な血液検査とエコー検査を実施します。

甲状腺ホルモン薬の管理

甲状腺を全摘した方は、生涯にわたって甲状腺ホルモン薬の服用が必要です。決められた量を毎日同じ時間に飲むことが大切で、適切な量を維持することで再発予防にもつながります。飲み忘れに注意し、旅行時などは予備の薬も持参しましょう。

日常生活の制限

甲状腺がんの治療後は、特別な生活制限はありません。仕事、運動、旅行など、体調に合わせて普通の生活を送ることができます。ただし、過労は避け、規則正しい生活を心がけてください。

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