動悸・息切れ

動悸・息切れとは？

動悸・息切れの原因

循環器疾患

虚血性心疾患（狭心症・心筋梗塞）

心臓に血液を送る血管（冠動脈）の血流が悪くなることで、心臓が酸素不足に陥った状態です。動悸や息切れ、胸痛などの症状が現れます。血管が完全に詰まると血液が流れなくなり、次第に心筋が壊死して死に至ることもあります（心筋梗塞）。

不整脈

心拍数が異常に速くなったり不規則になったりすることで動悸を感じます。運動や精神的な興奮、発熱などによる一時的な不整脈は問題ありませんが、心房細動など病気によるものもあります。また、心拍出量の低下により息切れを伴うことがあります。

心不全

心臓のポンプ機能が低下することで、全身に十分な血液を送り出せなくなります。軽い動作でも動悸や息切れを感じるようになり、進行すると安静時でも呼吸困難などを感じることがあります。

心臓弁膜症

心臓にある弁の機能に異常が生じた状態です。これにより心臓への負荷が増大し、動悸や息切れが生じます。不整脈を併発することもあります。

肺血栓塞栓症（静脈血栓閉塞症）

肺の血管に血栓が詰まる病気で、突然の息切れや動悸、胸痛・背部痛、呼吸困難が特徴です。飛行機など長時間同じ姿勢をしていた後に起こりやすく、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれます。

肺高血圧症

肺動脈圧が上昇する疾患で、肺と心臓の両方に機能障害を引き起こします。労作時の息切れ、動悸、胸痛などが主な症状で、進行すると心不全に至ることもあります。

その他の原因

貧血

血中ヘモグロビンの減少により、組織への酸素供給が不足します。心臓は酸素不足を補うために拍動を増加させるため、動悸や息切れが生じます。

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンの過剰分泌により心拍数が増加し、安静時でも強い動悸を感じることがあります。発汗や手の震え、体重減少なども伴います。

脱水

体内の水分不足により血液が濃縮されると、心臓は血液循環を維持するために拍動を増加させます。このために動悸や息切れが生じます。

低血糖

血糖値の低下により交感神経が活性化され、動悸や発汗、手の震えなどの症状が現れます。

動悸・息切れの症状

典型的な症状

心臓がドキドキと強く打つ感覚、脈を速く感じる、階段昇降や歩行時の息切れ、安静時の呼吸困難感、胸部の圧迫感や不快感などが主な症状です。

随伴症状

めまいやふらつき、冷や汗、胸痛、疲労感、失神感、手足の冷感などを伴うことがあります。また、夜間の息苦しさで目が覚める、横になると息苦しくなるなどの症状も見られます。

緊急性の高い症状

突然の激しい動悸や息切れ、強い胸痛や顔面蒼白、冷や汗などを伴う場合は、重大な疾患の可能性があります。処置が遅れると命に関わることもありますので、迷わず救急車を呼んでください。

動悸・息切れの検査

心電図検査

心臓の電気信号を調べる基本的な検査です。不整脈や心筋の異常を詳細に評価します。

24時間心電図検査（ホルター心電図）

携帯型の心電図装置を24時間装着し、日常生活中の心電図を記録します。通常の心電図検査では捉えきれない一時的な不整脈や症状との関連を調べることができます。

超音波検査（心エコー）

心臓の大きさ、壁の厚さ、弁の機能、血液の流れなどを超音波で観察します。心不全や弁膜症の診断に役立ちます。

血液検査

貧血、甲状腺機能、心筋逸脱酵素、BNP（心不全マーカー※）などを調べ、動悸・息切れの原因を特定します。

※脳性ナトリウム利尿ペプチド、心臓に負荷がかかった際に分泌されるホルモン

動悸・息切れの治療

心疾患の治療

不整脈に対しては抗不整脈薬の投与を行います。薬物療法で効果が不十分な場合は、カテーテルアブレーション（手術）などの専門治療も検討されます。

心不全には利尿薬や心臓の動きを調整する薬（ACE阻害薬、ARB、β遮断薬など）を用いた薬物療法を行います。症状や病期に応じて薬剤を選択し、定期的な効果判定と調整を行います。

症状が強い場合は、一時的に症状を緩和する薬剤を使用することもあります。ただし、根本的な原因治療が重要であることに変わりはありませんので、薬剤の選択と使用は慎重に行います。

その他の原因疾患の治療

貧血には鉄剤の補充、甲状腺機能亢進症には抗甲状腺薬など、原因に応じた適切な治療を行います。必要に応じて専門機関をご紹介することもあります。

生活習慣の改善

禁煙、適度な運動、塩分制限、アルコール制限などの生活習慣改善により、症状の軽減と合併症の予防をはかります。

受診のタイミング

早期受診を推奨

• 軽い労作（階段昇降、歩行など）で動悸・息切れが起こる
• 夜間に息苦しさで目が覚める
• 横になると呼吸が苦しくなる
• 以前より疲労感が強く、日常生活に支障を来している
• 動悸・息切れが頻繁に起こる
• 健康診断で心電図異常や心雑音を指摘された
• 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある方で症状が出現した

など

速やかな受診が必要

• 軽い労作（階段昇降、歩行など）で動悸・息切れが起こる
• 突然の激しい動悸で立っていられない
• 安静時でも強い息切れがある
• 胸痛、冷や汗、吐き気を伴う動悸・息切れがある
• 意識を失いそうになる、
• 顔面蒼白、唇や指先が青紫色になる（チアノーゼ）
• 動悸・息切れとともに手足のむくみや体重増加が急激に現れた

など