橋本病

橋本病

橋本病とは?

橋本病

甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を調節する重要な役割を担っています。心臓の働きを活発にし、体温を維持し、脳の機能を正常に保つなど、私たちの生命活動に欠かせません。甲状腺の機能が低下すると、甲状腺ホルモンを正常に分泌できなくなって体の新陳代謝が低下してしまいます。これが甲状腺機能低下症です。
橋本病(慢性甲状腺炎)は、自己免疫により甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気で、甲状腺機能低下症の代表的な原因の1つです。自覚症状を伴わないケースも多いですが、「疲れやすい」「寒がりになった」「体重が増えた」などの症状がある方は、箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックにご相談ください。

橋本病と甲状腺機能低下症

橋本病は、成人女性の約10人に1人に見られる比較的頻度の高い病気です。ただし、橋本病と診断されても全員が甲状腺機能低下症を伴うわけではなく、必ずしも治療が必要とは限りません。まずは専門医による診断で、原因と病態をはっきりさせることが大切です。

橋本病の症状

初期症状

初期の橋本病は無症状のことが多く、健康診断で甲状腺の腫れを指摘されて偶然見つかることが多いです。炎症の影響で、まれに甲状腺の腫れやのどの違和感が生じることもあります。

甲状腺機能の低下による症状

甲状腺機能低下が起こると全身の新陳代謝に影響が出るため、以下のような症状が現れます。症状が多岐にわたり、程度にも個人差があるため、しばしば他の病気と間違われます。

全身症状

  • 寒がりになる(夏でも寒く感じる)
  • 疲れやすく、だるさが取れない
  • 動作が鈍くなる
  • 体重が増加する(食事量は変わらないのに太る)
  • 声のかすれ
  • など

顔つき・首

  • 顔や手足のむくみ(特に朝のまぶたの腫れ)
  • 甲状腺の腫大
  • のどの違和感
  • ボーッとした表情になる
  • など

神経・精神症状

  • 物忘れが多くなる
  • 無気力になる
  • 日中でも眠気が強い
  • 集中力が低下し、ボーッとする
  • など

循環器症状

  • 脈が遅くなる(徐脈)
  • 軽い運動でも息切れする
  • 全身のむくみ
  • 心臓が大きくなる(心肥大)
  • など

消化器症状

  • 食欲が低下する
  • 舌が大きくなる(巨舌)
  • 便秘になりやすい
  • など

皮膚症状

  • 汗をかきにくくなる
  • 皮膚が乾燥してカサカサになる
  • 髪の毛が抜けやすくなる(脱毛)
  • 眉毛の外側が薄くなる
  • 皮膚が青白くなる
  • など

筋骨症状

  • 全身の脱力感
  • 筋力が低下する
  • 肩こりがひどくなる
  • 筋肉が疲れやすい
  • など

その他の症状

  • 月経不順
  • 月経量が多くなる(月経過多)
  • コレステロール値の上昇
  • 肝機能障害
  • 貧血
  • など

橋本病の原因

自己免疫異常

橋本病は自己免疫疾患の1つです。本来は体を守るはずの免疫システムが、誤って自分の甲状腺を攻撃してしまいます。なぜこのような異常が起こるのか、詳しいメカニズムはまだ完全には解明されていません。

遺伝的要因

家族に橋本病や他の自己免疫疾患(関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病など)がある方は、発症リスクが高くなります。ただし、遺伝だけで発症するわけではなく、環境要因も関係しています。

環境要因

過度のストレス、妊娠・出産、ヨウ素(海藻類に多い)の過剰摂取、ウイルス感染などが発症の引き金になることがあります。特に出産後は発症しやすい時期として知られています。

性差・年齢

橋本病は女性に多い病気です。30~50代での発症が多いですが、どの年齢でも起こる可能性があります。

橋本病の検査と診断

血液検査

甲状腺機能と自己抗体を調べます。橋本病では、抗甲状腺抗体(抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体)が陽性となることが多いです。また、甲状腺ホルモン(FT3、FT4)が低下し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が上昇していれば甲状腺機能低下が疑われます。

甲状腺エコー検査

超音波検査で甲状腺の大きさや内部の状態を調べます。橋本病では甲状腺が腫大し、内部が不均一な模様(蜂の巣状)を示すことが特徴です。当院では超音波専門技師が詳細な検査を行います。

橋本病の治療

経過観察

橋本病と診断されても、甲状腺機能が正常な場合は治療の必要はありません。ただし、将来的に機能低下を起こす可能性があるため、定期的に血液検査を実施して経過を観察します。

ホルモン補充療法

甲状腺機能が低下している場合は、甲状腺ホルモン薬を服用します。不足しているホルモンを補うだけなので、副作用はほとんどありません。治療中は定期的に検査を行い、適切な薬の量を調整します。

日常生活での注意点

規則正しい生活

規則正しい生活を送って免疫力を高めることが大切です。十分な睡眠(7~8時間)、バランスの良い食事、適度な運動により体調を整えましょう。甲状腺機能の低下によって疲れやすくなっている場合は、無理のない範囲で活動し、適度に休憩を取ることも大事です。

ストレス管理

過度なストレスは免疫システムに悪影響を及ぼし、症状を悪化させることがあります。リラクゼーション法を身につけ、趣味の時間を作るなど、ストレスと上手に付き合う方法を見つけましょう。

ヨウ素の過剰摂取を避ける

ヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能を悪化させることがあります。通常の食事に含まれる程度なら心配ありませんが、昆布だしの飲み過ぎや海藻サプリメントの大量摂取は避けましょう。

適切な服薬の継続

甲状腺ホルモン薬を処方されている方は、必ず指示通りに服用してください。飲み忘れが多いと症状が悪化します。他の病院を受診する際は、橋本病の治療中であることを必ず伝えてください。

妊娠時の注意

妊娠を希望される方は、妊娠前から甲状腺機能を正常に保つことが重要です。甲状腺機能低下は流産や胎児の発育に影響することがあるため、定期的な検査を受けながら、適切な量の甲状腺ホルモン薬を継続してください。

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