全身の健康状態に影響する糖尿病
糖尿病による慢性的な高血糖状態は、血管に大きな負担をかけるため、全身に様々な影響を及ぼします。初期段階こそ自覚症状に乏しいものの、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があります。合併症による症状が現れて初めて糖尿病と診断されるケースも少なくありません。
糖尿病の合併症は時に命にも関わることがありますが、適切な血糖管理と定期的な検査によって予防・改善が見込めます。箕面市・箕面萱野駅のながい内科循環器内科クリニックでは、糖尿病専門医が皆様の健康を管理し、合併症を予防・改善いたします。
糖尿病の急性合併症
急性合併症は、急激な血糖値の上昇により短期間で重篤な症状を引き起こす状態です。主に以下の2つがあります。
糖尿病性ケトアシドーシス
血糖値を下げるホルモンであるインスリンが著しく不足し、異常な高血糖状態が続くことで起こります。インスリンが不足すると体内でブドウ糖をエネルギーとして利用できないため、代わりに脂肪を分解してエネルギーを得ようとします。その結果として血液が酸性に傾いて重度の脱水状態を引き起こし、強い口渇、多尿、全身倦怠感、腹痛、嘔吐などの症状が現れるのです。重症化すると意識障害を起こすことがあり、処置が遅れると命にも危険が及びます。
特にⅠ型糖尿病の方がインスリン注射を打ち忘れた時などに見られます。また、感染症などで全身状態が悪くなるとインスリンの作用が低下するので、通常どおりインスリンを打っていてもケトアシドーシスになることもあります。
発症時の対応
ケトアシドーシスを起こした際は、水分補給と血糖コントロールのために速やかな点滴とインスリンの補充が必要となります。入院での処置が必要になりますので、周囲の手を借りつつ、必要に応じて救急車の要請もご検討ください。
糖尿病ケトアシドーシスとペットボトル症候群
清涼飲料水を大量摂取することでも糖尿病ケトアシドーシスを起こすことがあります。これは飲み物に含まれる大量の糖に体が対応しきれずに血糖値が急上昇するためで、ペットボトル症候群やソフトドリンクケトアシドーシスとも呼ばれます。
ジュースだけでなくスポーツドリンクにも多量の糖が含まれているため、夏場やスポーツ時の水分補給にも注意が必要です。
高浸透圧高血糖症候群
主にII型糖尿病の患者様に見られ、異常な高血糖が引き起こされる急性合併症です。糖尿病ケトアシドーシスほどのインスリン不足はありませんが、著しい高血糖と重度の脱水により意識障害を引き起こすことがあります。
高齢者に多く、肺炎や尿路感染症などの感染症、嘔吐・下痢による脱水、手術などのストレス、脳梗塞や心筋梗塞など、糖尿病以外の病気がきっかけとなり起きることもあります。
発症時の対応
糖尿病ケトアシドーシスと同様に、脱水症状に対する点滴と血糖値を下げるためのインスリン注射が必要です。処置が遅れると体内臓器への負担が増加し、最悪の場合は命に関わることもありますので、すぐに病院を受診してください。
糖尿病の慢性合併症
血糖値が高い状態が長期間続くと血管が損傷を受けて動脈硬化を進行させ、次第に全身に様々な合併症を引き起こします。慢性合併症は数年から数十年単位でゆっくりと進行するのが特徴で、進行するまで自覚症状がほとんど現れません。
慢性合併症は主に「細小血管症」と「大血管症」の2つに分類されます。
細小血管症
細小血管症は、糖尿病による動脈硬化が進み、全身の細い血管が障害されることで起こる合併症の総称です。糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症などがあり、これらは「糖尿病の三大合併症」としても知られています。
糖尿病網膜症
網膜にある毛細血管が障害を受けることで起こる目の病気です。初期は自覚症状がありませんが、進行すると視力低下や失明の原因となります。
糖尿病腎症
腎臓のろ過機能を担う細い血管が障害を受ける病気です。尿中の蛋白量の増加や尿に血が混ざる(尿潜血)などの症状が現れ、さらに進行すると腎不全に至る可能性があります。
糖尿病性神経障害
高血糖により末梢神経が障害を受ける病気です。手足のしびれや痛み、感覚低下、足がつりやすくなるなどが特徴的な症状です。
大血管障害(大血管症)
動脈硬化により比較的大きな血管に起こる障害です。大きな血管が障害されると脳や心臓などの重要な臓器が影響を受けるため、重篤な症状を引き起こしやすいのが特徴です。
これらは糖尿病のほかにも高血圧、脂質異常症、肥満症などの複数の危険因子が関係しており、重なる因子が増えるほど発症リスクが増大します。いずれも糖尿病と関係が深い病気ですので、総合的な管理が重要となります。
心筋梗塞・狭心症
心臓の血管が狭くなることで起こる病気で、胸痛や息切れなどの症状が特徴的です。糖尿病性神経障害を併発していると、特徴的な所見である胸痛を自覚できずに発見が遅れることもあります(無痛性心筋梗塞)。
脳卒中
脳の血管が詰まることで起こる病気の総称で、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などが含まれます。手足の麻痺や言語障害などの症状が現れ、対処が遅れると重篤な後遺症のリスクが高まるほか、命の危険もあります。
末梢動脈疾患・足病変
手足の血管が狭くなる末梢動脈疾患に加え、神経障害による感覚低下が重なると傷に気づきにくくなります。傷の治りも遅くなるため、感染症を起こして重症化すると組織の壊疽(えそ)を引き起こす可能性があり、最悪の場合は四肢の切断が必要になることもあります。
合併症の予防と管理
糖尿病合併症を予防するには、適切な糖尿病治療の継続が必須です。日常的な血糖コントロールと定期的な受診はもちろん、体調の変化に気づいた時は、すぐに医師に相談するようにしてください。
血糖値の管理
適切な血糖コントロールは、糖尿病の治療、および合併症予防の基本となります。定期的な検査で血糖値やHbA1cの値を確認します。
生活習慣の改善
禁煙、適度な運動、バランスのよい食事など、患者様のライフスタイルに合わせた健康的な生活習慣を心がけましょう。無理なく続けることが大切です。
定期的な検査
合併症の早期発見のためには、定期的に検査(健康診断)を受けましょう。合併症の多くは初期の自覚症状に乏しいため、症状の有無に関わらず定期的に受けることが大切です。