胸が痛む（胸痛）

胸痛とは？

胸痛の原因

循環器疾患

狭心症

冠動脈の血流が不足することで心筋への酸素供給が減少し、胸部の圧迫感や締め付けられるような痛みが生じます。労作時に症状が現れ、安静にすると軽快することが特徴です。

心筋梗塞

冠動脈が完全に閉塞し、心筋の一部が壊死する疾患です。激しい胸痛が持続し、冷や汗、吐き気、呼吸困難などを伴います。生命に関わる緊急事態です。

心膜炎

心臓を包む心膜の炎症により、鋭い胸痛が生じます。深呼吸や体位変換により痛みが変化することが特徴です。

心臓弁膜症

大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症などの心臓の弁の異常により、心筋への負荷が増加し、労作時の胸痛や圧迫感が生じることがあります。

動脈瘤

大動脈にできた瘤が徐々に大きくなると、周囲の組織を圧迫して胸痛を引き起こすことがあります。瘤の破裂は命に関わる緊急事態となります。

その他の原因

気胸

肺に穴が開いて空気が胸腔内に漏れ出す疾患で、突然の鋭い胸痛と呼吸困難が特徴です。若い男性（特に長身瘦躯の方）や喫煙者に多く見られます。

肋間神経痛

肋骨に沿って走る神経の痛みで、特定の部位を押すと痛みが増強します。深呼吸や体動により痛みが変化することがあります。

逆流性食道炎

胃酸の逆流により食道に炎症が生じ、胸焼けや胸痛・背部痛を感じます。症状は食後に悪化することが多いです。

胸痛の症状

痛みの性質

締め付けるような、刺すような、焼けるような、重苦しい感じなど、原因により痛みの性質が異なります。

随伴症状

痛みには動悸、息切れ、冷や汗、吐き気、めまい、左肩や背中への放散痛などを伴うことがあります。これらは心臓由来の症状であることが多いです。

緊急性の高い症状

突然の激しい胸痛、冷や汗を伴う持続する胸痛、呼吸困難や意識障害を伴う場合は、直ちに救急車を要請してください。

胸痛の検査

心電図検査

心臓の電気信号を調べます。心疾患の診断における基本となる検査で、症状出現時に調べることが重要です。

24時間心電図検査（ホルター心電図）

携帯型の心電図装置を使用し、24時間連続で心電図を記録します。通常の心電図では捉えきれない、一時的な不整脈や症状との関連を調べることができます。

超音波検査（心エコー）

超音波検査を使って心臓の状態を調べます。心臓の運動異常や心膜液（心嚢水）の貯留の有無などを評価し、心臓由来の胸痛か否かを評価します。

血液検査

心臓の筋肉が損傷した際に血液中に放出される心筋逸脱酵素（トロポニン、CK-MBなど）を調べます。また、体内の炎症反応や感染症の有無も同時に調べられます。

胸部X線検査（レントゲン検査）

特殊な放射線を使って胸部のレントゲン撮影を行います。肺疾患や大動脈の異常、気胸などの診断に有用です。

胸痛の治療

急性期症状への対応

心筋梗塞や大動脈解離による急性期の症状が現れている場合では、速やかな緊急処置が必要です。緊急手術が必要になることも多いので、当院で適切な初期対応を行い、必要に応じて専門機関と連携します。

慢性期の治療

狭心症に対しては血栓の形成を防ぐ薬（抗血小板薬）や心臓の活動量を抑える薬（β遮断薬）などを用いた薬物療法を検討します。薬物療法と同時に、症状を悪化させる生活習慣の改善も重要です。

薬物療法で症状のコントロールが困難な場合は、手術（冠動脈形成術や冠動脈バイパス手術など）を検討します。

原因疾患の治療

症状の原因となる疾患の鑑別を行い、それぞれに適切な治療を行います。原因疾患を悪化させる可能性があるので、診断が確定するまでは鎮痛薬の使用は慎重に検討します。

受診のタイミング

早期受診を推奨

• 労作時（階段昇降、早歩きなど）に胸痛が起こる
• 繰り返し胸痛が起こり、持続時間が長くなっている
• 胸部の違和感や軽い痛みが数日から数週間続いている
• ストレスや興奮時に胸の痛みや圧迫感を感じることがある
• 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙歴などの危険因子がある
• 家族に心疾患（心筋梗塞、狭心症など）の既往がある

など

速やかな受診が必要

• 突然の激しい胸痛（引き裂かれるような、あるいは締め付けられるような痛み）がある
• 胸痛とともに冷や汗、吐き気、嘔吐、めまいを伴う
• 胸痛が20分以上持続し、安静にしても改善しない
• 左肩、左腕、顎、背中への放散痛を伴う
• 呼吸困難や意識障害がある
• 顔面蒼白、血圧低下などのショック症状を伴う

など