動脈瘤

動脈瘤とは？

動脈瘤の症状

破裂するまで無症状

動脈瘤の多くは、相当大きくなるまで症状がありません。健康診断の超音波検査やCT検査で偶然発見されることがほとんどです。このため、定期的な検査が重要になります。

自覚症状がある場合

腹部大動脈瘤

• 腹部のしこりを触れる
• 腹痛
• 腰痛
• 腹部の圧迫感

など

胸部大動脈瘤

• 声がかすれる
• 飲み込みにくくなる
• 吐き気・嘔吐
• 咳、血痰が出る

など

※動脈瘤が生じた部位によって異なります

破裂時の症状

動脈瘤が破裂すると激しい痛みとともにショック状態となり、意識を失うこともあります。大量出血により命に関わることもありますので、一刻も早い救急処置が必要です。

動脈瘤の原因

主な原因は動脈硬化です。血管の壁が傷つき、弱くなることで、血圧に耐えられずに膨らんでいきます。その他、生まれつき血管壁が弱い場合（マルファン症候群など）、感染、外傷、炎症などが原因となることもあります。

危険因子

動脈瘤ができやすくなる要因として、高血圧（最大の危険因子）、喫煙、高齢（65歳以上）、男性、家族歴、動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患（COPD）などがあります。

特に喫煙者や高血圧の方は血管へ負担がかかりやすいため、そうでない方以上に高いリスクがあるとされています。

動脈瘤の検査と診断

腹部エコー検査

お腹に超音波を当てて大動脈の太さを測る検査です。一般的に、大動脈の直径が正常径の1.5倍以上に拡大している場合に動脈瘤と診断します。胸部大動脈なら45mm以上、腹部大動脈瘤なら30mm以上が目安です。当院では超音波専門技師が精密な検査を行い、動脈瘤の確実な発見を目指しています。

CT検査

造影剤を使ってX線撮影することで、動脈瘤の正確な大きさ、形、位置を確認できます。動脈瘤の拡大速度を評価できるので、手術を検討する際に必要な情報取得のほか、定期的な経過観察にも使用されます。

MRI検査

磁気の力を利用して血管の状態を詳しく調べます。造影剤を使わなくても血管を描出できるため、腎機能が悪い方でも安全に検査できます。

血液検査

動脈硬化の危険因子（コレステロール、血糖値など）を調べます。また、炎症や感染の有無も確認し、動脈瘤の原因を探ります。

※CT・MRI検査は提携医療機関と連携して実施します

動脈瘤の治療

経過観察

小さな動脈瘤で症状がない場合は、定期的な検査で大きさの変化を観察します。半年から1年ごとに超音波検査やCT検査を行い、急速に大きくなっていないか確認します。この間は血圧管理や禁煙など、危険因子のコントロールが重要です（後述の「日常生活での注意点」を参考にしてください）。

手術

動脈瘤が大きい場合や、急速に拡大している場合（半年で5mm以上）は、破裂の危険が高いため手術を検討します。

人工血管置換術

動脈瘤の部分を人工血管に置き換える手術です。治療効果が高く、長期成績も良好ですが、開腹手術となるため、体への負担は比較的大きくなります。

ステントグラフト内挿術

太ももの血管からカテーテルを入れて、動脈瘤の内側にステントグラフト（金属の骨組みに人工血管を張ったもの）を留置します。開腹・開胸の必要がなく、体への負担が少ないので、高齢者や手術リスクの高い方にも適応できます。

※手術は提携医療機関と連携して実施します

日常生活での注意点

血圧管理

高血圧は血管に負担をかけ、動脈瘤を発生させやすくします。130/80mmHg未満を目標に管理し、処方された降圧薬は、医師の指示通りに継続してください。高血圧の治療については、こちらのページもご覧ください。

禁煙

喫煙は動脈瘤の促進要因となり、破裂のリスクを高めます。ご自身での達成が難しい場合は、当院の禁煙外来もご利用ください。

運動の注意点

適度な運動は大切ですが、過度な運動は血圧を急上昇させ、動脈瘤に負担がかかります。ウォーキングなどの有酸素運動を中心に、無理のない範囲で行いましょう。

定期検査の重要性

動脈瘤は症状なく大きくなるため、定期的な検査が不可欠です。一般的に半年から1年に1回程度の検査となります。ただし、急な腹痛や背部痛が出た場合は、すぐに受診してください。